テレビ回想法の使い方



テレビ回想法 懐かしい話の使い方
作業療法士 来島 修志

回想法とは?

このビデオに登場するお年寄りの方々は、昔のことを思い出し、楽しく、懐かしく、時に頼もしく語って下さっています。私はただ聞き役にまわり、知らないことを教わり、話し手のやさしい心に触れながら、びっくりしたり、胸が熱くなったりしていきます。そしてお年寄りに対する尊敬の念が自然と沸いてきて、心から感謝の気持ちを伝えたくなります。同時に回想を語って下さったお年寄りの方々も、終了後に「楽しい時間でした、ありがとうございました。」と言われます。

「回想法」は、回想すること自体が心地よく満足の得られる活動であり、お年寄り同士あるいはお年寄りと聞き手の若者とが、共感し合ったり気持ちを交わしたりする情緒的交流の機会になります。

認知症のお年寄りは、最近のできごとや自分が行ったことを忘れてしまう記憶の混乱があり、介護者との関係がうまくいかなくなったりします。しかし、昔の記憶や手が覚えた「なじみの作業」を行う能力や、豊かな感情は比較的障害を受けずに力を残していらっしゃいます。そこで昔を思い出しおしゃべりをする「回想法」が、他者とのコミュニケーションを可能とし、QOLを高めることに役立つのです。

現在「回想法」は、認知症に対する非薬物療法(薬を使わない治療) の一つとして、認知機能低下の進行予防、抑うつなど気分の改善、行動障害の改善に向けた取り組みとして、関心が高まっています。また健康な高齢者に対しても「自らの人生を振り返り受容していく」積極的な生き方や建康増進、生きがいづくり、そして介護予防、寝たきり予防に有用であると考えています。

回想法の対象者と目的

(1)対象者
言語的コミュニケーションの可能な軽度から中等度までの認知症高齢者集団の中で孤立している、あるいは抑うつ傾向の見られる高齢者

(2) 目的
①自分自身を肯定的に捉える機会をもつ。
②喜怒哀楽の共感を通して情緒的交流の機会をもつ。
③満足体験を通して情緒的安定を図る。
④集団帰属意識をもち孤立感をなくし、対人関係、仲間づくりのきっかけを得る。
⑤援助者にとって対象者再発見の機会とし、普段のお付き合いや、アクティビティ導入に生かす。

難聴のある方にはマンツーマンでの対応が望ましいでしょう。 過去に悲惨な戦争体験をしている方や、触れられたくないエピソードをお持ちの方もいます。事前に情報収集を行い、テーマの選択や集団で行うか個人で行うかどうか、判断が必要です。

最近では、健康な高齢者に対しても、自らの人生を振り返り受容するという課題達成のための「人生回顧(ライフビュー)」が注目されています。

「テレビ回想法」 ってどんなもの?

テレビの前にお年寄りに集まっていただき、テレビ映像を用いて、気軽に「回想法」を行っていただこうと考えました。このビデオは言わば、“回想法支援ツール(道具)”です。またご家族の方に、お年寄りとー緒にご家庭のお茶の間で「回想テレビ番組」を楽しんでいただこうと考えました。もし可能でしたらお孫さん、曾孫さんも一緒にご家族みんなで見てお年寄りの言葉に耳を傾けていただきたく思います。

DVDの前半は、生活に密着した手になじんだ作業を、出演のお年寄りに尋ね、伝授してもらいながら進んでいきます。DVDの後半は、具体的な回想をお年寄りから聞き出しています。このときの質問の仕方が「回想法」の一つのモデルと考えてください。最後に映像だけを繰り返し、質問の内容をテロップで流していきますので、それを参考に同時進行で、テレビの前でお年寄りに質問を行っていただこうというわけです。

DVDによっては、最初から映像やテロップが流れてきます。(第5巻、第6巻)そして途中に体操を行い、お年寄りの集中を持続させる工夫を行っています。このDVDはお年寄りだけに勝手に見てもらえばよい、というものでは決してありません。スタッフあるいは家族の方が一緒に参加して、お年寄りの反応をキャッチし、回想を促し、回想を聞き、気持ちを受けとめることが重要なのです。

特に、昔の生活を知らないためにお年寄りにどんな質問をしてよいかわからない若いスタッフの方、あるいは面と向かうとお年寄りが構えてしまいコミュニケーションが取りづらくなってしまう場合に、テレビの映像がナビゲーターとなり、お互い気楽に回想法を進められるものと期待しています。

テレビ回想法を行う時の配置

「テレビ回想法」の進め方

(1)テレビの前にグループで扇形に集まってお座りください。スタッフは(参加者4人に対し1人以上のスタッフが望ましい)参加者一人ひとりの顔が見える位置(扇の両端、扇の要)に座ってください。※テレビモニターの大きさにもよりますが参加者は12人位までが望ましいです。

(2)“面白いテレビですよ”“懐かしいものが映りますよ”と興味を喚起してみましょう。

(3)とにかくスタッフやご家族の方々も見て楽しんでいただきたいのですが、 役割として映像を見ながら参加者一人ひとりの表情、反応を見回していて下さい。

(4)参加者のつぶやきをキャッチし、その参加者の顔を見てうなずいたり、会話を交わしたりしてください。

(5)ひとりの話を聞きながら、同時全体にも目配りをして、うなずきや共通の反応があったら 「◯◯さんも同じようにうなずいていらっしゃいますよ。」と声をかけ、お互いを結びつけるように進めてください。

(6)参加者の反応が乏しい時には、びっくりした表情等を見せたり、 自ら質問を投げかけたり、感想を発したりしてみましょう。

(7)前半は視聴に集中していただいて結構ですが、参加者の反応があれば、テレビを気にせず回想を進めていただいて構いません。

(8)後半の無声部分は自由にお話いただいても結構ですし、スタッフがテロップに従って参加者に質問を投げかけていただいても結構です。

(9)以上30分間視聴していただいて終了となりますが、参加者の雰囲気に応じてテレビを消して話を続けてもよいですし、番組の途中で語られた個人の回想話を取り上げて披露し合っても良いでしょう。

(10)その日のテーマに合わせて、実際の物品や道具をあらかじめ準備しておき、それらを活用してアクティビティを展開してもよいでしょう。皆さんでアレンジしてみてください。

スタッフの役割

(1)個人に対して
①メリハリのある表情と抑揚のある声を心がけましょう。
②アクション、ボディランゲージ、スキンシップを盛り込みましょう。

(2) 集団に対して
①集団全体と個人を同時に、あるいは交互に見つめていてください。
②しゃべり過ぎず、個人の反応を引き出すことを心がけてください。
③参加者同士の相互交流を促し、集団の輪を繋げる役割を意識してください。
④情緒的発言や表情などの、ノンバーバルコミュニケーション(言葉以外の手段を用いたコミュニケーション)を見落とさず、それを個人や集団全体に伝えるようにしましょう。

(3) チームに対して
①リーダーは、DVDのスタート(開始)、ポーズ(一時停止)、ス卜ップ (終了)を行う進行役です。
②参加者の反応をキャッチする分担も含めてチーム内で役割を確認しておいてください。
③参加者個人についての新しい発見をスタッフ全体に伝え、セッション中のエピソードをぜひ、生活ケアの場面で活かしてください。

こんな時はどうすればよいでしょうか?(Q&A)

Q1:沈黙が続いてしまうのですが・・・・
A:自分が慣れるまでは気になるものですが、沈黙に敏感にならずに、自然な“間”を大事にしましょう。

Q2:回想が十分できない方への対応は?
A:イエスかノーで答えられる質問や選択肢を用意しておき、質問の仕方を工夫してみましょう。

Q3:話が止まらない方に対しての対応は?
A:タイミングを図って自らの視線をテレビモニターにそらしてから、他参加者の方へ顔を向け「〇〇さんにも話を聞いてみましょう。」と話を切り替えてみましょう。

Q4:繰り返し同じ回想を話す方への対応は?
A:お年寄り同士は意外と繰り返しの話を心地よく受け入れていることが多いです。語られる内容ではなく、話し手と聞き手の感情の通じ合いに焦点をあてて考え、基本的には受容しましょう。

Q5:攻撃的言動が見られる方への対応は ?
A:まずは、攻撃の的となっている方を守りましょう。リーダーが緩衝役、ブレーキ役となり、集団の雰囲気を和らげましょう。それでも抑えきれない場合は、本人の退室も止むを得ないと思います。今後の適応を考え、個別の対応や参加者の組み合わせを考慮しましょう。

Q6:どれくらい続けたらいいの?
A:「テレビ回想法」は、気楽に継続する事に意味があります。頻度はいろいろ試してみてください。しかし、集団に馴染めない方や抑うつ傾向のある方には、フォーマルな集団療法あるいは個人療法を集中的に行う必要があります。その際には目標を立てて、回数を限定した治療的な「回想法」を実施することになると思います。

映像で語られている回想は、参加者の回想を促す「きっかけ」に過ぎません。「そうだその通り!」と同調したり、「いや、こうだったはず!」と否定したり、「私のほうがよく覚えている。」「いや、家の方では・・・」そんな光景がテレビの前で繰り広げられることを期待しています。

「回想法」が様々な施設や在宅ケアの現場、多くのご家庭で活用され、認知症の行動の改善や進行予防、抑うつの防止、介護予防に役立てていただけることを願っております。 それでは、「テレビ回想法」はじめましょう!

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