「思い出を分かち合おう、今日をともに生きよう」~回想を生かした認知症をもつ人とのよりよいコミュニケーション パム・シュワイツァーワークショップ

このDVDは、2019年9月にNPO法人パーソン・センタード・ケアを考える会さん(以下考える会さん)が招聘して来日した、パム・シュワイツァーさん(以下パムさん)のワークショップを収録・構成したものです。

パムさんは、「思い出を分かち合おう、今日をともに生きよう」(Remembering Yesterday,Caring Today)と名付けた、認知症をもつ人とのコミュニケーションプログラムを20年以上に渡って実践し、積極的に紹介してきました。

パムさんのプログラムでは、モノや写真、演劇、音楽・ダンス、メモリーボックスといったものを使い、会話が困難になっている人にも、昔のことを思い起こす「回想」によって刺激を与え、ご家族と一緒に楽しむことができる場を提供してきました。

パム・シュワイツァーさんは、演劇畑の出身で回想法の実践者、現在はヨーロッパ・レミニセンス・ネットワークの代表をされています。以前はイギリスロンドン郊外のブラックヒースという町で、「エイジエクスチェンジセンター」という回想を生かした多世代交流センターを運営しておられました。(現在は引退され、別の方が運営されています。)センターには世界中から回想法や認知症ケアの実践者・研究者が訪れ、回想法の総本山といったイメージでした。当時のエイジエクスチェンジセンターの様子を撮影した映像を特典映像として収録しました。

エイジエクスチェンジセンター(イギリス ブラックヒース)

RYCTプロジェクト(Remembering Yesterday Caring Today Projects)

タイトルになっている、「思い出を分かち合おう、今日をともに生きよう」は、パムさんが考案・実践されている、RYCTプロジェクト(Remembering Yesterday Caring Today Projects)を、考える会さんが日本語訳したものです。

RYCTプロジェクトは、パムさんが認知症をもつ人や家族を対象におこなってきたクリエイティブな(創造的な)回想ワークの集大成といったものです。過去の経験を思い出し、他の人達とその経験をわかち合い、そして記憶をもとに皆で再現する即興劇をおこなったり、思い出をまとめたメモリーボックスを作ったりと、思い出を創造的な活動に発展させる取り組みです。言葉が出づらくなっている人にも取り組むことができるよう、物や道具を使ったり、絵を描いたり、演劇やダンスなどの非言語的なコミュニケーション活動(ノンバーバールコミュニケーション)を、取り入れていくことを推奨しています。

結婚式を演じて再現する即興劇

DVDの内容

収録内容(128分2枚組)
Disk1
1 はじめに(3分)
2 回想ワークとは(35分)
3 回想ワークの体験(22分)
Disk2
4 クリエイティブな回想ワーク(30分)
5 男性の方への回想ワークについて(11分)
特典映像
高齢者の歩んできた人生をケアに活かす試み「イギリス エイジエクスチェンジセンター」2001年制作(27分)

チャプター2「回想ワークとは」では、高齢者にとって回想することとはどういうことか、回想ワークが認知症をもつ人や家族、ケアに携わる人にどのような効果をもたらすのかについて解説しています。回想ワークの基礎を学ぶことができる講義です。

チャプター3「回想ワークの体験」では、ワークショップの参加者同士がエクササイズを通して、「回想ワーク」を体験しました。その様子を収録しています。実際に回想ワークを行う際の留意点などを体験を通して学びました。

チャプター4「クリエイティブな回想ワーク」は、写真や道具を使ったり、人生の一コマを再現する即興劇、記憶を絵にすること、思い出を集めた「メモリーボックス」などを活用した、クリエイティブな回想ワークについての講義です。RYCTプロジェクトの実例も紹介しています。

チャプター5では、パムさんの夫であるアレックス・シュワイツァーさんのお話を収録しています。アレックスさんは、写真家としてパムさんのプログラムに参加し、支援を続けてきました。その経験のなかで、認知症をもつ男性の方に提供する回想ワークについて話をしています。

ワークショップの内容は、これから認知症をもつ方への取り組みとして、回想ワークを取り入れようとされている方にとって、基本的な知識を習得できるわかりやすい入門講座となっています。

チャプター2 回想ワークとは
チャプター3 回想ワークの体験
メモリーボックス
アレックス・シュワイツァーさん

参考サイト

写真と文 桑野康一